コロナで学校が不安定に?今後の教育を最前線で進める福田先生の語る未来の学校教育とは。

世界中に脅威をもたらした新型コロナウイルス。現在日常が少しずつ戻ってきていますが、教育現場では長期間にわたる自粛生活による遅れを取り戻すための対応が考えられています。日常が戻ったら学校はどうなるのでしょうか?これから教育界では何が起こり、どのような対応をするべきなのでしょうか?

教育現場の最前線で活躍する福田先生にお話を伺います。

福田晴一(ふくだはるかず)氏

昭和31(1956)年、東京都生まれ。みんなのコード学校教育支援部主任講師、元杉並区立天沼小学校校長。約40年の教員生活を経て、2018年4月NPO法人「みんなのコード」に入社。61歳で新入社員となる。2020年度からの小学校におけるプログラミング教育必修化に向け、指導教員を養成すべく、全国を東奔西走中。

モデレーター:
株式会社LX DESIGN
代表取締役社長 金谷 智(かなたに さとし)

1990年、富山県高岡市生まれ、高岡高校、東京学芸大学 教育学部を卒業後、
アメリカ・サンフランシスコのスタートアップ企業、公立小学校学級担任、(株)リクルートAI領域を経て、(株)LXDESIGNを設立。
神戸市、神戸大学との産学官連携協定、経産省の起業家教育への協力など、今注目のEdTechスタートアップ起業家。
外部人材活用支援事業”複業先生”、AIソーシャル進路相談プラットフォーム”imAdokI”などを通じて、教育業界のアップデートを力強く牽引。

部分登校と消毒、先生の間で生まれる格差

今のコロナの状況は、何年か前のような、インフルエンザで学級閉鎖になってそれが終わってよかったね、という話ではないですよね。つまり、一部解除とか部分登校という形になっていくのですが、曜日によって学年が変わったり。中3と小6は次の学校に上げなくてはならないから、教育課程を全て履修させなければならないので学校は非常に大変です。午前中1・2時間目を1組、給食を食べて4・5・6時間目を2組が行うなど、学校の先生はすごく大変になると思います。あの家庭はお仕事に努めてるから午前中に来させた方がいい、といったバイアスがかかってくるとさらに本当に大変ですよね。

学校の先生は、午前中子どもたちが帰ったら机・椅子を全部消毒するんですよ。今は自治体によって違うけれど、給食も食べさせるのか、お弁当のように持ってこさせるかという問題や、下駄箱も半分ずつに分けるか、さらに子供がけんかしていたら仲裁に触っていいのかとか、考えだしたらきりがない。教育行政管理職はとにかく3か月間は厳しい状態になってしまいますね。

小学校2年生は掛け算九九があり、3年生は分数の計算がある。だから九九は2年生のうちに教えないと3年生になった時に困るわけでしょ。文科省は、小6と中3はとにかく早くやって学年を上げなければならない。5年生は6年生になってから足りない分の内容をやってもいいよ、となっているけど、そんなことしたら学校は混乱る。だから今年度中に終わらせた方がいいよね。そうすると主要教科は、漢字なら2年生で覚えるべき漢字は2年生のうちに、3年生の算数は…といったように国語算数は必ず履修する必要がある。そうなると行事を精選しなければならなくなる。多分、音楽・図工・家庭科といった教科は軽視されるでしょう。

でも、小学校の先生はハンドリングで担任がやるからいいんですよ。中学校は、技術の先生はしばらく授業無いよ、とか逆に国語・数学・英語をしっかりやれよ、とかね、格差が出るでしょう。その中で間違いなく教育委員会は、納税者に説明責任を取られるから、「(授業時間)何時間で終わった」のように調査が入るはず。すごい学校が不安定になります。

子どもが行きにくい学校とは

不登校の子どもたちというのは、今までと何も変わらない安定した生活を送ってるんですよ。だけど、何とかギリギリで学校に行っていた子どもたちが一斉休校になって、プリント学習・オンライン学習になって、「いいじゃんこの勉強スタイル!」という風に禁断の実を食べた子がいたとしますよね。自分の学び方に合っていると感じちゃうと、学校が再開しても行きにくくなってしまうじゃないかと。これは、心理指導するべきことね。

あとは、まだ少ないけれど、“濃厚接触者がいたら出席停止“もあると、「あいつん家、濃厚接触者だって」と噂になってしまうかも。そうすると学校に行きにくくなる。だから多分学校が再開したからといって、全員が集まるわけじゃない。そうなると、先生はそのフォローもしなければならないんです。

崩れていく新規採用の先生のルーティン

普通なら4月に新規採用・転任で入った場合、出勤をして職務は○○○、服務だ…と色々段階があるんです。でも現状は、全部それがすっ飛んでいきなり混沌とした学校に入る。今までなら、“新規採用の先生は、4月は疲れ切る、ゴールデンウイークで保つ、なんとか1学期が終わって、夏休みにホッとする“といったサイクルで頑張る。ですが今回は夏休みが無い自治体もある!!1番心配なのは、先生がつぶれてしまう、ことだと僕は思っています。

そこで、若い皆さんの非常勤や何かでたくさんのニーズが出てくると思う。本来、初任者研修にはベテランの先生がつきます。ですがその先生たちも手一杯のはずなのメンタルキープが大変でしょう。もっと大変なのは養護教諭です。保健の先生は、やはり学校の医療従事者なので、熱を出したらどうしよう、隔離しよう、どう対応しよう、というので保健の先生にも東京都には100人くらい新規採用がいるんですよ。これは超大変だろうね、、、。

保護者には嬉しい学校再開

保護者にとっては待ちに待った学校再開だけど、部分登校だなんだですぐに帰ってきちゃったりするので、ピリピリしたり疲れ切ったりしちゃう。さらに(担任が)新規採用であったら、学校の教育に敏感な人は余計にデリケートになり、ああだこうだ、言いかねないなというのが心配です。

「先生」を支える存在

スクールカウンセラーの存在が非常に大事だなと思います。先生を支えなくちゃいけないからね。あとはコミュニティ-スクールに関しては地域の連携が必要だし、小学校1年生の学校ソフトランディング支援が必要になってくるかな、と。

コミュニティースクールはフリースクールと別物で、学校に理事会があるような感じ。

学校はとにかく、子どもたちがガリガリに痩せていないか、DVではないか、ちゃんと食べているのか、といった風にまず子どもの健康管理・維持が最初。その次に、生活リズムを直す。昼夜逆転もいるからね。そしてようやく「勉強」になると思う。なので、先生たちの研修なんかはどこかにすっ飛んでしまうよ、ってこと。

これが学校再開したら大変だよ、ということですね。

Q.初任者の離職率が上がる&先生たちがそもそも足りない、という2つの視点で考えると、情報科目・プログラミング科目どころではない、と一般的には思われていそうですよね。これらの話が盛り上がっていた時に今回この状態になりましたが、その辺りはどのような感じなのですか?

A.鋭いですねぇ(笑)。テクノロジーが進んでいるところにコロナがきた。それでもやっぱり(情報教育は)主要教科だろうと。確かに今まではこのことに関してとても追い風だったけど、正直言って今は向かい風です。じゃあ何ができるかといったら、プログラミングじゃなくてテクノロジーで、オンラインでできることはオンラインでしよう!というのが一番!

つまりオンラインとかテクノロジーとかを少し固めておかないとダメだよ、という話。例えば、緊急時(コロナの第二波)が来てもオンラインの授業が継続してできるのかとか、震災とか自然災害で避難所となった場合の生活支援やQOL :Quality Of Life(親が使えなくても子どもたちがタブレット端末を使えるか等)を整えられるのかなど。特に今は、小学生でもYoutubeを大人より扱ったりしているからね。とにかくやはり今は、テクノロジーを進めておいた方がいい“端末が無いからできないんです“とみんなよく言うの。じゃなくて「環境が人を作る」「あるから、使う」という逆の発想をしよう。

そして、これから情報セキュリティとか情報モラルが大事とはいっても、機器がない・端末が無いのにどうやって習得できるの? 現状、誰もそこまでやる気にならないよね。

そんな中で、テクノロジーを使って個人から集団を作ることが必要ではないか。今まであった強い集団というのは学級集団や部活集団だった。そうではなくて、テクノロジーを使って、今皆さんと僕がつながっているようにネット上でも共有できる集団。それが発展してさら他校・他地区との協働学習が成立し、格差是正につながるのではないか。

つまりプログラミングを、テクノロジーを活用するという広義で解釈して、できることをやっていくという形。例えば、目の前に端末がある、PCがある。これってどういう特性があるんだろうね。繰り返したり、順番に処理したりするのが得意だよね、その中でコンピューターが問題解決できるのってどんなプログラミングが入っているんだろう。というようにつなげていくことができるよね。

1 COMMENT

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です