地域共創を目指す地元企業の姿

中国で新型コロナウイルスが発生してから約半年が経ったが、完全に騒動が治まるにはまだまだ時間がかかりそうだ。それに伴い市場では多くの企業が影響を受け、企業の在り方や働き方を変化させている。そこで今回は富山県砺波市に拠点を構える砺波工業株式会社代表取締役、上田信和様に普段の会社経営において大切にしていることや、コロナウイルスの影響で変化した点についてお話を伺った。

「モノづくりは人づくりから。」

まず初めに私は、上田様が会社を経営する上で最も大切にしていることは何かを問いかけた。上田様が会社経営において大切にしていることは主に3つ。人を大切にすること、会社の透明性を保つこと、そして地域とのつながりを大切にすることだ。建築といえば作業がメインであり、何か物理的・技術的な要素が経営の中心にあるイメージであったが、中でも「人」というキーワードに様々な思いがこもっているように感じた。言うまでもなく会社が雇用するのは「技術者」である。彼らの仕事はこれまで自分の経験や知識を現場にフィードバックすること。後に現場監督になっていく人材は、「ヒト・モノ・カネ」といった経営資源の全ての責任を担うことになる。会社が従業員を大切に育てるということは彼ら自身の成長ややりがいのみならず、会社全体の質や利益の向上にも繋がるのだという。また、外部の「人」の存在も建築業には欠かせない要素だ。上田様のお話から、「人」に並んで「地域」もキーワードであるように感じた。様々な公共事業はすべて税金で賄われ、利用者や従業員もまた地域の人。地域の存在があってこそ経営が成り立つのだ。地域にとって必要な要素は何か。試行錯誤を繰り返し、建築というフィールドで地域と会社の活力を同時に盛り上げていく必要がある。砺波工業様は、いつまでも地域に必要とされるような企業でありたいという。

with/afterコロナの時代に沿った会社経営の方法

冒頭でも述べたように、今日、ほとんどの分野で新型コロナウイルスの影響を受け、経済面や会社の在り方など今後より一層重視すべきことが浮き彫りになったのではないか。砺波工業様を含む建築業界もその例外ではない。最も大きな変化はやはり「オンライン化」の影響だ。これまで当たり前であった各地の現場の人とのコミュニケーションや会社内の会議もすべてオンライン上で行うようになった。人を重要視する上田様にとって、直接対話できないのはやはりどこか寂しいところがあるという。しかし、オンラインツールを導入することで遠くの従業員とのやりとりにかかる時間や交通費等のコストが抑えることができたり、社内の技術レベルを一斉に引き上げたりすることができるという点ではとても良い機会であった。とはいえ建築業は実際に現場で人が作業をしなければ仕事が進まないため、全面的に在宅勤務を導入することは不可能だ。また、現在は受注済みの案件に取り掛かっているものの、今後の現場を確保する仕事が行えていない。さらには新型コロナウイルスの影響で様々な企業が運営方針を見直した際、設備投資に重点を置くという保証もない。砺波工業様では、これらの影響を踏まえ、慎重に対策を考えていく必要があるという。

リーダーシップ×建築とは

最後に、建築業における「リーダーシップ」の必要性についてお話を伺った。近年、Society 5.0を掲げた社会は大きく変化してきている。それに伴い、社会で生き抜くために必要なスキルや求められる人材も変わってきたのではないだろうか。建築業ではチームごとに一つの現場を仕上げていくため、トップダウン制のイメージが強かった。確かにこれも間違いではないのだが、内部の人員構成にも変化があるということを忘れてはならない。上田様によると、建築業では30~40代の人が現場監督となり、その下で働く作業員は60~70代が多い。一見同じ体制であっても、一人一人の役割は変化していくということだ。誰もが現場監督になり、リーダーシップを発揮する可能性を持つ。また、年齢層が幅広いため、普段の会話で信頼関係を育むことも重要である。そのためには、各々の知識や技術だけでなく、コミュニケーション力やリーダーシップを重視し、築き上げた信頼のもとで一丸となってより良い建築物を仕上げていくのだという。さらに、仕事をするうえで身に着けたスキルは地域に入った際にも発揮できるようなもの。どの場面でも人をリードし、頼りにされる人材を育てていきたいという。

おわりに

今回、砺波工業株式会社代表取締役、上田様に様々なお話を伺った。全体を通して、仕事を単なる作業として捉えるのではなく、そこには職人としての誇りや人間らしさが詰まった現場の姿があるように感じた。地域のために良い建築物を作り貢献すること、人として大切なことを学びながら会社全体で成長していくこと、このどちらもが最終目的であり、最善の手段でもあるような印象を受けた。そして何より、上田様自身が会社や従業員に誇りをもって働いていらっしゃるということが大変よく分かった。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です